NOIR TALE【ノワールテイル】 は、現在準備中です。
✞ ALi†Ce 《懐中時計の終焉》
「懐中時計を壊したのは、私。 時間も、感情も、現実も。 全部止まれば、ようやく“わたし”になれる気がした。」
――狂気と夢の狭間で、誰かの“最後”を止めるか、自ら“終わり”を受け入れるか。
狂気を纏った少女は選択を迫られた。
過去も、今も、未来も、感情も、存在も。
懐中時計の針が“彼女自身”の最期を
告げようとしたその瞬間、
少女は決意を固める。
「すべてが止まっても、私は”わたし”であり続けたい。」

―――「また、夢に落ちたみたい」
白い耳を揺らしながら、アリスはぼんやりと辺りを見渡す。
霧に包まれた黒い森。
アリスの手元にあったのは、2つの止まった懐中時計。
時計の針は少しも動かない。
「この時計が動いたとき、全部終わる気がする」――

アリスは夢の中にそびえ立つ、崩れた時計塔へと歩を進める。
踏むごとに軋む階段。
壁には無数の“割れた鏡”。
映るのは彼女の記憶……失われたはずの時間。
「これは、私の…過去?」

崩壊した十字架と時計塔の残骸が、静かに地に突き刺さる。
彼女の足元には、夢の屍が積み重なっている。
アリスは立っていた。
その手には、血に濡れた懐中時計。
時間は、次第に壊れ始めた。
「何か大事なことを忘れている気がする。」
アリスは記憶の旅に出る。

「時間?そんなもの、ここでは誰も持っちゃいないよ!」
鮮やかな赤い部屋で、帽子屋は狂ったように笑っていた。
周囲のバラの花は散っていく。
彼の瞳に映る世界は、色が消えている。
「君が止めたんじゃなかったのかい?」
アリスは何かを思い出したように、不敵に笑みを浮かべた。

「ねぇ、アリス。君は“誰”だっけ?」
森の奥、空中に浮かぶ白い猫耳と笑う口だけの存在。
チェシャ猫は彼女の記憶を一つひとつ試す。
「君が思い出すたびに、この世界は崩れていくんだ」
「白うさぎを消したのも、君だっただろう?」
狂気に笑ったアリス。
そして、白い猫耳と笑う口は、そっと闇に消えていった。

城の廃墟にて、アリスは“もうひとりの私”と出会う。
眠る者の夢を食べ続ける存在。
彼女の瞳の中には、アリスの記憶が閉じ込められていた。
「私の時間を奪ったのは君。」
「君の記憶を奪ったのは私。」
「君の終わりが近づくたび、私は君を思い出す」
「でも、今夜が最後だ」

塔の最上階。
時計の中心にたどり着いたアリス。
空から降るのは“時間の灰”——誰かの夢の成れの果て。
「私が"わたし"になるために、すべて一度終わらせないと。」
時計の針が、微かに動き出す。

時間はもう動かない。
誰もそれを悲しまなかった。
悲しむ人も何もかも、すでにこの世界から消えていたから。
かつて塔にいたはずのアリスは、
今やその頂から飛び降りた存在。
地に立ち、灰の舞う空の下で微笑んでいた。
「私はもう、誰かの物語にいない。
だから今度は、"わたし"が世界の主役をやる。」
「一枚引いて。
生きるか死ぬか、運次第でしょ?」——
――――――――――――――――――――
チェシャ猫も、帽子屋も、もうひとりの私も、もうここにはいない。
残されたのは——“止まった時間”だけ。
彼女は、決意した。
「さようなら、私。」
「そして、またいつか夢で。」
残るのは、壊れた時計の針の“カチ”という最後の音——
